リサイタルに向けて

未だ見ぬものにお金を払っていただく。

…コンサートのチケットというのはつまりそういうものです。



同じ音楽でも実際に形になっているCDや楽譜を売るのとはちがって、生演奏は、予め同じものを聴かせたり見せたりすることができないので、買う側はチケットを手にすることでいったい自分が何を買っているのか、当日来てみるまで本当のところは未知なまま、、、ある意味すごい賭けであります!


或いは、...奏者に大いなる信頼を寄せて期待していただくほかないのです。


だからいつも、チケットを買っていただけるのは本当にありがたいな、と思いますし、信じてもらえるからこそ頑張れる、期待してもらえるからこそ応えられる、というのも事実です。


前売りのチケットが売られていって、少しずつ、当日聴いていただく方々のお顔がわかってくると、なおさらうれしく、気合いが入ってきます。


同時に、チラシやウェブサイトを通して私の創ろうとしているステージのことをできるだけうまく伝えるにはどうしたらよいものか、と...もっとも難しい課題はそこです。


伝わるのは曲目、会場、季節、それらの情報から期待または想像のできる、なんとなくの雰囲気くらいでしょうか。


ですから、まったく知らない方が、どんな風かわからない公演にいきなりお金を出してくださる、というのは奇跡的なケースだと思っています。


それでも演奏家である以上、私の愛する音楽を、心の奥からのメッセージを、ひとりでも多くの方のお耳と心に届けさせてほしい、というのが一番の願いですので、とにかく、まずは少なくとも、皆様のお目の端っこにでも止まらないと話にならない!  というわけで、あちこちのホールやお店に公演のチラシを置かせていただいています。



たとえば海外から来日するオペラの大きなポスターが貼られたホールで、またある時は、傍らで静かに読書をする人たちがいる市民のための施設で、私はやや緊張して事務局の場所を探します。


そこの会場以外の場所でおこなう公演のチラシをお願いすることに対しては、果たしてどんな対応をされるのかな〜 と少し心配になりながら。


ところがなんと、これまで訪れた会場、施設等々約20箇所において、対応して下さった職員の方々はどの方も皆にこやかに快く預かってくださっているのです。


その中でも今日訪れたホールでは、ひとりの女性の職員の方が、さっそくに私のチラシをラックに配架しながら、とても優しい笑顔で、「秋にチェロって素敵ですね♪」と話しかけてくださったのです!


その言葉を聞いてとてもとてもうれしくなったのと、同時に私も「本当にそうだなぁ!」って思いました。


あらためて人の言葉で言われると、1018日はもう秋なんだなぁ、暑さのおさまった美しい季節にチェロのコンサートなんて、素敵だなぁ、って感じたのです。


素敵な日になると思います。

もっともっとこの演奏会を自分の中で大切に思う気持ちが、強まりました。


施設によっては、チラシの委託は郵送でもいいですよ、とおっしゃってくださることもあるのですが、こんな風に行く先々で私を心強くさせてくれる小さな言葉や笑顔のおみやげをいただいてみると、やはり人に直接会う時のあたたかさには代えられないなぁ、と思うわけです。


折しも今日は秋のような風が吹き、だいぶ過ごしやすい気温で、チラシの束を担いで歩いても汗もかきません。 最初の頃は不安でいっぱいだったチラシ配架のお願いも、今では楽しいことになってきました。


これからリサイタルまで、こんな日が増えていくんだなぁ、と思うとなんとも言えず心浮き立ちます♪


ところでこれを読んでくださっているチェロがお好きな皆さまについでに一つお願いしたいことがあります。

それは、やはりどんなに私たちが宣伝を頑張っても、紙面や画面から音楽の心地よさや幸福感を伝えるのは至難のワザなのです。


ことクラシックや弦楽器に関しては好き嫌い以前に、よく知らない遠い世界(キャァァ…)という認識をされているケースが多いのかもしれないなぁ、と近頃思います。


どうぞ、すでにそれを知っている皆さまは、チェロやクラシックをよく知らないお友達に、どんな素敵なことがあるのかお話ししてみてくださいね。


人と人との言葉の中では、伝えることのできるものがまだまだ沢山あると思うからです♡